2005年-3月

2005年9月30日(金)

朝からいい天気。創作のあと、昼前まるいちへでかけ、とこぶし、かわはぎなどを受け取る。トマトとしそを細かく刻み、オリーブオイルと塩で和える。せっせ、せっせ、とまるで、遠距離恋愛の相手を迎える恋人のよう。昼過ぎにダヴィンチの関口くんやってくる。いつもの高級な、カワウソ印のお酒をくれました。仕事の打ち合わせの前、タラタラとしゃべりながら食事。まぐろ刺、かわはぎの肝合え、トマトサラダ、煮とこぶし。るなとりんごがまた上がってきたがおとなしかった。えらい。さすが新聞に載っただけはある、というのは、今朝の新聞に「いなりっこ」の練習にはげむるなのことが紹介されてあり、近所のひとからその記事を見せてもらったのです。えらい、えらいとほめると照れて外へ駆けていった。ようやく関口くんと、次に出す本の相談。ダヴィンチに連載していた仕事シリーズを一冊にまとめるのですが、全部で30話あり、指のないピアノ調律師から、顔が鳥の警官、果てはゴミバケツや道路が主人公になったり、という、破天荒な作品集なので、順番と題名が肝心です。日が暮れる頃、ようやく決まった。非常におとなしい、意味最小限の題名。松本からとどいた猫印ジャムを坐古家へ届けにいく。クロネコ怠慢の話をききまた腹が立つ。晩にまたまるいちへ行き、関口くんはさんまの開きを二枚、うちは昼にとっておいたアジを買いました。タクシー乗り場で見送ったあと、家に帰って袋をあけると、アジはアジワシだった! つまり、イワシが二匹分ついてきた! まるいち今夜もありがとう。アジとイワシはオリーブオイルで焼き、バルサミコ酢とレモン汁をかける。茄子も焼く。おろぬき大根。昼にあまったトマトにさらにシソを混ぜる。ラジオで阪神爆笑の負けをきく。

2005年9月29日(木)

朝はパンをたべ創作。正午に横浜そごうの前で文春の岡さんと待ち合わせ。大量のおろぬきがおみやげで、ビニール袋に束をどっさりじかにいれていったのは、あまりにも不作法かなと少し反省しましたが、幸い岡さんはよろこんでくださった。大人の対応。そびえたつスカイビル頂上の中華料理屋へ。アメリカでの話やこれからの創作の話。「海ウサギ」の件は大笑いされた。三崎へ戻り、金曜のまるいちへ。ものすごく活きのいいとこぶし、せいちゃん自信作のサンマ開きを買う。きよちゃんに寄り、七時ごとにチヂミを焼いといて、と頼んでおく。帰りにるなが、ミニ自転車に乗って待ち伏せしていた。もうすごく上手に乗っている。暴走族のように玄関先に乗り付け、舎弟のりんごちゃんを引き連れドドドとあがってくる。少し巨大化した分、足音もでかい。掛け布団の上でふたり跳ねているのを写真に撮った。日暮れまで少し創作。ラジオをつけてフフフーンと料理をはじめると、いきなり阪神が大量点でもう勝敗は決しました。ただ、下柳投手が投げているので、気をぬかず熱心にききます。お膳を出してから、半被まで着る。晩ごはんは、チヂミ、とこぶし煮付け、おろぬきおしたし、おくら納豆。オーなんか大阪っぽい。九回の表終了。とたんに雑音ピーガーと入り音声きこえなくなる。全国的に電波が混んでいるのかな。ラジオを耳に寄せ、微音で優勝をたしかめました。洗い物の最中、大阪の知人から、何本か電話がかかってくる。「おう、しんちゃん、ひとりか?さみしいの。こっちはいま20人おるで!(バックに六甲おろし) なに! 半被きてる? そうか、こっちは半被まではおらんわ。引き分けやな!」ガチャン!。なんやそれ。とにかくおめでとう。

2005年9月28日(水)

寒いでんな。松本より寒い。朝はタカラヤのパンをたべる。水曜なので商店街はだいたいが休み。たまっていた洗濯物をひさしに干したあと、町内をうろうろとパトロールする。居酒屋かスナックの店名が変わっていた。昼前から創作。夕方、「こんばんは~」と声がしたので、トトとおりていくと、坐古父が祭のときの写真をもってきてくれていた。「おろぬきいる?」「いるいる」ということで、大根のおろぬきを届けてくれたのはるなだった。るな少し巨大化していた。近況をいろいろ話すうち、クロネコ事件を教えられ激怒。先月、アメリカへ行く前、松本の家のそばの農協から各地へデラウエアを送ったのですが、それが坐古家には、腐った状態で届いた。指定された日付より、三日も遅く着いた。坐古家が苦情をいうと、クロネコは弁償しますといって、松本の農協に連絡をとり、あたらしいデラウエアを取り寄せて渡した。この事態だけでもひどい話ですが、送った当事者のぼくが、送られた当事者である坐古さんからじかに話を聞くまで、こういうことが起きたと知らなかったというのは、いったい何のつもりだ。ひょっとして、これまで知らされなかっただけで、届いていなかったり、腐って届いたりした荷物が、他にも多くあるのではないかと思われてもしかたがない。地団駄を踏んで怒っていると、るなが、玄関先に長く置かれていた自転車をもってスイスイと帰っていった。晩ごはんはいさぎ刺。平鯛塩焼き。大根おろし、トマトサラダ、おろぬき最高。しかし冷蔵庫いっぱいの束をいったいどう消費すればいいのか。食後はラジオで阪神タイガースの試合。とうとうマジック1。これから100連敗しようにももうそんな試合数がない。

2005年9月27日(火)

京急線に乗って三崎へ。祭以来だからつまり、ふた月ぶりということになる。オー怒られる。くもり空の三崎は思いもよらず寒い。窓を開け放し、簡単な掃除をしていると、「しんちゃあん!」となじみの声が外でひびく。佐藤さんだ! トトト、と階段をおりていくと、まるでずっといたような自然さで「さんまもらったよ~、食うか?」。小刀のようなのを三本もってきてくれる。いつもありがとうございます。八百兵へいくと、いつものおばさんがレジの前にすわっている。「こんちは」というと振り向きもせず「あ~」。そしてゆっくりと椅子ごとまわり、「あらやだ、痩せたんじゃないですか。苦労してるんでしょう」「そうでしょうか」「ふーん、散髪したんだ。やけに短いね。なんだか懲役いってたみたいだね」。まるいちは平日にもかかわらずにぎわっていた。夜は佐藤さんからのさんまがあるので、明日用に、いさぎと平鯛を買った。韓国料理の「きよちゃん」へいき、のぶさんと再会のビール。こうして新しい店ができたり、看板が新調されたり、孫がふたりできたりと、のぶさんの近辺はいろいろとめまぐるしく動いている。けれどのぶさん自身は「ま、ま、ま」と、いつものようにただビールをくれる。もらいっぱなしだ。今度ドラム缶ビールを贈ろう。家に帰ってさんま刺身、塩焼き。トマト、枝豆。大根おろしときのこ。フイー、とお茶をすすっていると、小雨のなか、のぶさんと元ボクサーの娘婿(阪神ファン)がやってくる。ビールと焼酎をのみながら高尚で助平なだじゃれをお互いにいいあう。

2005年9月26日(月)

新宿経由で銀座へ。東武ホテルにいくと、ベル係の女性が、前にもお世話になったひとだった。爪切りやら加湿器やら運んでもらったのです。今回は一泊だけです。近くの松竹本社へいき、関さんのご紹介で、無声映画にお詳しい監督に、ひじょうに興味深いはなしをたくさんうかがう。メモにいろいろと書いては「こんなふうだった」と目の前に物があるように話してくだったほか、サイレントについて知りたいならここ、ここ、それにここと、紹介してもいただいた。感激。監督も関さんもお忙しいはずなのに本当にありがとうございました。ホテルへもどり、長薗さんに電話して「いま東京にいるんですけど」というと快く「おう」と応じてくれた。白金高輪の駅で待ち合わせ、近くの料理屋さんあらきへ。季節の海山物がおいしい。お刺身、茶豆、なす田楽、きのこなどなど。カウンターの向こうから視線を感じ、いったい誰だろうと見あげた瞬間、びっくら仰天おどろいた。大学の同級生。ぼくは当時(いまも)極端に友達が少なかった。彼女とは毎年、年賀状では会う約束をし、しかしこの十年会う機会がなかったのです。まさかなす田楽を食べている最中に再会するとは。また、長薗さんとも、共通の知り合いがいてみなで驚いた。アメリカの話でその後、長薗さんとひさしぶりにたくさんお酒をのんだ。焼酎のボトルが一本あいていた。途中から奥さんもやってきて松本の病院のうわさ話などした。ホテルまでタクシー。湯船につかりブクブクとにう。

2005年9月25日(日)

午前中、朝日新聞。スティーブン・キングとエルモア・レナードの新刊について書いた。昼はとうもろこし。午後はモーつづき。文學界へのアンケート回答を忘れていたことを思いだしアワアワ。しかし、低気圧のせいか頭グラングランになり、もうなにも思いつかない。ガックリと休んでいたら、ヨーロレヒと歌いながら、園子さん、すき焼き鍋を提げてあらわれる。「やっぱりすき焼きには、キュウリの酢の物ですよね~」。そうなのか。とにかく、すき焼きはやはり牛肉にかぎる。デラウエア!

2005年9月24日(土)

日中モーつづけ、夕方、無事に終わる。すると大阪の母から、高級のモー肉とどく。この世は循環している。まぼろしの猫たち緊張気味に冷蔵庫の前に集まり爪でキーキー扉をかいている。夜、園子さんと映画を見にいった。帰りに中町通りの居酒屋へ行き、ゆば、鶏の唐揚げ、ふきみそ、土瓶蒸し、干し鮎をたべました。外で飲むとやはり酔っぱらう。布団を敷いてクリン。猫は冷蔵庫の前で牛の見張り。

2005年9月23日(金)

いい天気。涼しくてからっと晴れている。午前に庭掃除。昼間に朝日新聞の書評を書こうとしたら、園子さん帰ってきてブドウをもっていった。庭の柿を食べたらうまかった。ブドウも食べました。母から電話があり、何の説明もなしに、今日から広島で三連戦やんかあ、といったので驚いた。大阪の空気はいま、黄色と黒にけむっているのでしょう。夕暮れに庭の本腰掃除。けっこう腰痛い。とちゅうで資材センターへいってミニ熊手買ってくる。枯枝を切り、枯木を抜き、葉っぱを集める。日暮れに柿の実をもいで外水道で洗ってたべた。帰ってきた園子さんとデジタルカメラの現像所にいき、撮った写真データの四分の三が壊れていた旨知らされてショック。ジェリーもなめくじのお父さんもレンブラントも消えてしまった。マーブルヘッドで見た、なめくじが消えてしまうまぼろしは、ひょっとしてこの予言だったのか。松本駅でキップを買い、家に戻ってブロッコリー、肉じゃがにスパゲティ。青山ブックセンターから一周年記念イベントに出てほしいと依頼がある。

2005年9月22日(木)

モーモーモー。早速、阿部さんから書評用の本届く。読むのがたのしみ。園子さんの友達から巨大ぶどう届く。いま家の容積の三分の一をぶどう類が占めています。小アジを酢締めにし終わったころ、園子さん帰ってくる。ユカちゃんより電話があり、「借りてたザルもってくねー」といってたのが、じっさいには猿をザルに入れて連れてきた。園子さん感激。みなでごはん、ということになる。いさぎ刺し、小アジの酢漬け、ブロッコリーとトマト、肉じゃが、つるむらさきのおしたし。韓国海苔。猿キュート。ダヴィンチの関口くんより電話があり、連載をそろそろ本にしましょう、ということになる。しかも年内に。デラウエア!

2005年9月21日(水)

朝からモー。まるいちの魚届く。庭の根幹部分をきれいにする。もぐらになったような気分。生ごみで堆肥作るといいだよ、と通りがかりの大和さんにいわれる。「新聞載ってたな。悪いことで載らなくて、まあまあよかっただ」。園子さん帰ってきてぶどう煮はじめる。ジャムにするそうです。うしろから鍋をのぞくと、たしかにジャムジャムしたかたまりが煮えていた。晩ごはんはさんま塩焼き、とこぶし、セロリ、つるむらさきのおしたし、大根おろしにトマト。阿部さんから電話で書評の依頼があった。「いまさんまを焼いています」というと、「それはたいへんなところにかけてしまって申し訳ない」とおっしゃった。さすが釣り人。

2005年9月20日(火)

曇っている朝。大和さんよりまたケース二個分のぶどういただく。デラウエア!(名詞) 家はぶどうだらけだ! ぶどう風呂ができそうだ。モー順調。みずうみの責了。池田進吾さんとひさしぶりに電話会話。まるいちにひさしぶりに魚注文。猫たちバンザイを叫んでいる。夕刻、園子さんに鶴の本屋さんまで送ってもらいサイン本づくり。晩ごはんは、中華料理の外食にしようかと迷った挙げ句、結局家に帰り、豚しゃぶサラダ、たたみいわし、トマト、アカムツ煮付け(昼も)、納豆スパゲティを食べました。食後に6フィートアンダーのつづき。デラウエア! デラウエア!

2005年9月19日(月)

薄ら寒い朝。午前中は創作、午後は草取り。大量のデラウエアいただく。大和さんありがとうございます。夕方また創作。風呂にはいって晩ごはんは西脇順三郎。まちがえた、豚の角煮、たたみいわし、きのこ汁、トマトサラダ、枝豆。西脇順三郎訳の荒地は夜中に読みました。それから茂木健一郎氏の脳の本を読む。猫が膝をたたくので何かなと思ったら三時だった。デラウエア!(間投詞)

2005年9月18日(日)

早朝にモー。それからはひたすら掃除。床の雑巾がけ、水拭き。玄関、外階段と水洗い。猫たち呆れています。空気の乾いた晴れの日で、石やタイルの水がすぐにかわいていく。町なかへおりていき、本屋で書評用の本。園子さんの読みたがった「731」はどこでも売り切れていた。帰って、枝豆にビール。蟹、豚の角煮と大根、モロイヘイヤおしたし、トマト。園子さん虚脱し先に失礼。エルモア・レナードの新刊、ねずみの話、山の話など読む。レナードの本は学生時代に『スティック』や『グリッツ』などがよく流行りました。高見浩氏の訳が、当時から素晴らしく、いろんなひとに薦めてまわったものです。

2005年9月17日(土)

早朝にモーを少し。午前中は雑誌「ニュートラル」の原稿。うみうしの旅について書きました。昼頃に植木屋のおっちゃんがふたりやってくる。三時にかりんとう、レモン水を出す。「庭、よくむしってあるな~」とほめてもらってうれしい。「藤は枝の主線を決めて剪定するだ。ここをそうと決めたらよ、そっちはこうして(ブチ)落とす。こうして(ブチ)落とす。自分でやってみたらええだよ」。アメリカに襲われた柿の枝をはらい、枝についていた実を適当にもいで食べる。竹箒であとをはく。仕事が終わることは疲労コンパイセグンド。目をあけたまま居間で横たわっていたら園子さんが帰ってきた。風呂にはいり、外食。居酒屋のぼんくら。付け出しがすばらしい。なんと暖かいだしです。少し空気が冷えてきたのでちょうどいい。きのこおろし。ゲソのかき揚げ、焼き茄子、揚げ出し豆腐。ひさしぶりにお燗酒を二合のんだ。帰ってすぐ、目を閉めて寝た。

2005年9月16日(金)

早朝から創作つづき。午後までつづく。夕方は庭の草取り。ホホー、連休ですか! と夜になってからようやく気づいた。園子さんにも連休という概念があまりないので。晩ごはんは冷や奴、つぶした長芋と梅干し、れんこんのきんぴら。そして皿うどん。どうして皿うどんというのだろう。ひさしぶりにアメリカ帰りのルイジアナを読むと夢中。リーリーと胃が鳴っているかと思ったら虫の音だった。夜が重みをもってきました。

2005年9月15日(木)

朝から秋の気配。それは西向きの部屋の空気が冷えているから。創作つづける。途中で胃が痛くなる。オエーオエーといいながら書く。夕方になり、西日はまだ夏の気配。日暮れ前に書評のためエルモア・レナードの新作を読む。なんと主人公が動物で、しかも喋る。後書きによれば、80歳を迎え、孫のために書いたのだとか。登場人物がコヨーテや犬でも、セリフまわしは誘拐犯やポン引きと同じだった。園子さん猫の出迎えを受ける。晩ごはんはゴーヤと挽き肉の炒めもの、手製チーズちくわ、キュウリの甘酢漬け、そしてサンマ第三弾。前のよりたぶん値段は上だけど、前のほうがよりおいしい、という複雑な味。季節や体調のせいもあるとおもいます。大量の大根おろしを食べて胃痛をジアスターゼ。布団を二枚重ねにしてにう。

2005年9月14日(水)

朝起きて創作。電子メールと電話が頻繁にくる。荒井良二さんとも電話。来年の年始にいわさきちひろ美術館で対談をすることになった。いわさきちひろとは女性です。とても強い風のなか、アマゾン軍団が書籍とDVDを肩に載せてやってくる。エルンスト・ルビッチの映画、田口犬男氏の未読詩集、矢内原伊作著「ジャコメッティ」を買うのはこれで何回目だろう。何度まあたらしいページを開いても、そこに書かれてある文章はほとんど暗記しているくらいなのにドキドキしてしまう。そしてやはり、さっぱりわからない部分がモザイクのようにある。ほんとうの名著。お茶の先輩高橋さんよりドラゴンフルーツいただく。ほんとうにありがとうございます。波照間島の浜を思いだし、ついモリオさんの目になってしまう。晩ごはんはまぐろと長芋千切り、モロヘイヤおしたし、ワカサギの干したの、豚肉キムチ豆腐炒め。

2005年9月13日(火)

早朝の創作のあと、いろいろ雑事。曇っているので、庭の掃除にとりかかる。松や桜の木の下に、積もりに積もった落ち葉やごみ、石ころなどを取り除く。藤の蔦は鋏でブチブチ切る。そうか、こうしてみなガーデナーになっていくのだな、と少し恐ろしくなって、きのう発案した両手ブランブラン踊りをする。熊手で落ち葉をかく。さらにブランブラン。夕方からまたスティーブン・キングの「追憶のビュイック8」。このひとの書く「恐ろしい怪物」はいつもほんとうに恐ろしさの裏をつく。爆笑をさそうのです。腹からじゃばら状の管が出ていて、その先に黒々とした玉があって、ギョロッとこっちを向いたので、主人公が「あれは・・・まさか目なのか?」、とかこういうのばかり。そういう風に書いてしまうところが素晴らしい。怪物でないかな、とワクワクしながらいつも読むのですが、このビュイック8は大盤振る舞いで、しかも、張りぼての自動車のトランクが勝手にあいて、そこから飛び出してくる、というのですからもうたまりません。これでラストにまた●●なこと書いてあったらすごいな、と思っていたら、願ったとおりだったので感激した。しかも後書きまで。キングはその名の通りキングでした。誰のいうこともきかない王様です。その国には腹からじゃばらが出ていたり、ピカッと毛が光って相手を驚かせる怪物がたくさん住んでいる。千葉のねずみ王国などぶっつぶして壮大なキング・ワールドを作ればいいのに。年間どころか終身パスがほしい。クリスティーンに乗ってみたい。クージョから逃げたい。霧のあいだから出てくる触手をバーナーで炙ってみたい。ITの道化が風船をもって飛んでくるキング・ワールド。興奮してベランダから飛び降りかけていたら園子さんがちょうど帰ってきた。晩ごはんは肉じゃが、菜っぱに挽き肉をかけたタイ風サラダ、焼きうどん、きんぴら、ワカサギの干したの。夜はみずうみゲラ。

2005年9月12日(月)

きもちいい晴れ。朝からずっと創作。夕方に終わり。幻冬舎に原稿を送ったあと、両手をブランブランと振り回す不気味なかたちで野山を走ってみる。きのうのホタテがあまりにも素晴らしかったので、園子さんがスチロールの箱を二度ポンポンと叩いてみると、なんと新たに四コのホタテがとびだした。やはり酒蒸し。肉じゃが。アスパラとふしぎな菜野菜。キムチ。きゅうりとみょうがの酢の物。書評用にと買った本を読む。はじめの二冊は失敗。ねずみが別のものになる話は話自体すばらしいけれど編集のしかたが災難。山登りの話はおやじの足自慢だった。スティーブン・キングの文庫本を読み始めるとさすがに素晴らしくゲラゲラ笑いたくなった。張りぼて自動車が光るとは。

2005年9月11日(日)

朝から創作。昼前から、オー、こんなに降ることもあるのか、と見ほれるほどのどしゃ降り。庭の木々がへし折られたそばから雨粒をぬってニョロニョロとはえていく。そんな雨のなか、安曇野にあるかりんとうの「蔵久」へいきそばを食べた。パンを買った。そして親戚に「趣味の道具」を送るため、小町通りへ行きました。ウルシの民芸屋のおやじひじょうに失礼で憤慨。自己主張だけで接客のこころゼロ。ニャーと両手をイタリア人のように広げ首を左右に振りたくなる。いろいろ回ったけれど、結局、ぎゃるり灰月で、園子さんの見立てで土瓶を買いました。帰ってお風呂。録画しておいたシックス・フィート・アンダーの7回目をみる。葬儀屋さんを舞台にしたすごいテレビ。初回で夫を失った、一家の要のおかあさん(ふらふらしているけどまじめ)が、一念発起してフラワーアレンジメントの教室に通い出す。先生が彼女の花をみて「うーん、筋は悪くないんだけど・・・どうしてかしら。なんか陰気」。葬儀屋だからしかたない。本当にすばらしい。晩ごはんは、ホタテの酒蒸し、モロヘイヤおしたし、みょうがときゅうりの酢の物。そしてタイカレー。猫たち寄ってきて、「どうせ鯛はいっていないよねフフン」と、口からいきなりセーラムの墓場のあんちゃんが出てきてひどく驚いた。シックス・フィート・アンダーとは棺桶が埋められている場所。

2005年9月10日(土)

ワンワンがすっかり名物になった家の前の空き地に早朝からおおぜいの若いひとが出て、長い棒を振っている。野球か? まぼろしのグラブをつかみ、外へ駆けだそうとしてハッとまちがいに気づく。棒には旗がついていて「くだもの」とか「駐車こちら」などと書かれてある。「果物祭」です。つまり空き地をトラクターでならしていたのは、駐車場にするためで、この日のためだけにワンワン、ワンワンと草を刈っていたらしい。いやはや、果物の本場はスケールがちがいますなあと縁側に正座しフルーツようかんを食べたくなる。あまりにおもしろいので、創作の合間に駐車場に出てみました。歩いてみるとデコボコで、また足を折ってはたいへんなので、スケート靴をはいているような歩調でよたよた歩く。ギュインと突っこんできた軽トラックにひかれそうになる。「オーイ、こんなかで徐行してくんないと」「まったく、誰もききやしねえだ」と棒の若者たちが言い合うほどふだんにもまして運転があらい。季節の果物は農家のひとびとたちの狂気をかきたてるのか。たぶんそうでしょう。果物祭の前を選挙カーががなりたてて走っていく。家に戻り創作。東北から生ホタテが届く。午後に外を見ると、果物を買ったひとびとの乗用車がコヨーテのように走り去っていく途中だった。祭のあとの畑地をのんびりとランニング。園子さん帰ってきたので、猿田さんにチケットをいただいた音楽会へいく。ものすごい行列でおどろいた。行列を見ているうち、無性に焼き餃子がたべたくなった。園子さんに「焼き餃子を食べたいです」というと、「ああ! もう、演奏のあいだじゅう、餃子のことが頭から離れなくなった!」と叫び、周囲を驚かせていた。終演後、近くの定食屋ゆたかで念願の焼き餃子、野菜炒め、焼き鳥という名の他の肉、揚げ豆腐。果物祭の話をすると、がっくりと頭をさげて悔しがっています。そのすきに猫の手がつぎつぎと餃子をかすめていく。

2005年9月9日(金)

朝からワンワン。隣では犬もワンワン。そういえばトラクターと犬は似ている。鼻を地面につけて少しずつ前進していくところが。午前中、幻冬舎の小説。午後は「みずうみ」のゲラとエッセイ。きょうの夕方の運動は庭のみ。半分くらい掘りかえしたところで、近所のおばあさんがにこにこと近づいてきて、丸まると太った巨峰をくれたました。「すごく立派なぶどうですねえ!」こころから感嘆していうと、ゆっくりと首を振り、黒い粒のあちらこちらを指さしながら、「ここのところの色、だめだけどね。あー、ここもかたち悪いね。ああダメだダメだ」とつぶやきながら帰っていった。ジャコメッティ気質のおばあさんだったのか。ひさしぶりにみすず書房の伝記を読みたくなった。園子さんほっかむりして泥棒のような、いや、姉さんかぶりの格好で帰ってくる。庭仕事を終えると、すでに風呂のお湯がはられいっていて感激しました。晩ごはんはかつお刺、ほうれんそうのしらすおしたし、モロッコインゲン、そして麻婆豆腐。とてもおいしく、「きょうの料理にコーナーもてますな」と大阪のおっさんっぽくほめると、「ああ水っぽい。ああ、もっと辛くしたほうがよかった」と園子さんもジャコメッティ。

2005年9月8日(木)

台風ファミリー。つまり台風一過。少しだけ幻冬舎の小説を書いたところで、ワンワンとトラクターの音が鳴りだした、ぶどう畑をはさんだ向こう側の草地を刈っていく赤い車体。若者たちもめいめい電気式の草刈り機をもって草地をすすんでいく。ノー、電気式、ノー! 手でさくさく刈るカマにしてほしい。思いはとどかず、ふて寝三十分。おかげで頭のなかの草ボウボウが消えて、調子よく書くことができた。ありがとう、電気式! 感謝の念をかみしめながら畑のまわりをワーワーと走りに行く。帰ってからさらに庭の草を手動式のカマでブシブシ切っていく。「ご主人、ご主人、精がでますわねー」と猫村式にいいながら園子さん帰ってくる。「晩ごはんはサンマですわよー」。これは脂がのっておいしかった。近所の魚屋やスーパーで買えるサンマをこの季節のうちにすべて買いますから、それぞれどこで買ったか当ててください、と園子さんは半分眠り顔でいった。それからはんぺんのバター焼き。中華風野菜と鶏肉炒め。枝豆は固めに茹でた。猫たちはサンマのうまさにおどろき次々と巨大化し細長くなった。食後はぶどう。園子さんガクリ。

2005年9月7日(水)

幻冬舎の小説少し。そして日記が、ようやく今の時代に追いついた! かっこいい小説や音楽が発表されたとき、「時代がいま、やつらに追いついた」などという宣伝がされることが多いけれど、よくよく考えると意味のないことばです。その点、日記が時代に追いつくのは理にかなっている。外では一日じゅうハマクラ風の風が吹き巻いている。ゴーゴー、ゴーゴー、といわれても、原稿はそんな簡単にゴーできない。のろのろとなめくじばりに進んでいくだけ。アメリカ行きのエキスプレス便の小包を若い郵便局員がとりにくる。「大きい小包、小さい小包」「大きい小包、小さい小包」横でささやきながら「小さいほうだけもっていったら舌抜かれるよ」反応はなし。風のなかくるくると器用に回りながら園子さん帰ってくる。晩ごはんは、鮭のホイル包み焼き、茄子と挽き肉の味噌いため、韓国屋のキムチ、たくあん、蟹のみそ汁。夜は焼酎を飲みながら野球、と思っていたら、途中から飲むことを忘れた。阪神タイガースと中日ドラゴンズのいったりきたりの緊迫戦。延長に入ってさいごに、移籍選手がはじめてのソロホームランを打ち、抑えの久保田投手が終わりの三回をブランブランの腕で投げきって勝った。とんでもない野球の試合だった。このままたぶん優勝するでしょう。じっと正座したまま感激していると、園子さん畳からガバリと起きあがり、その後なにもなかったかのように、日本語のスカパーチャンネルで録画しておいた6フィートアンダーのガイド番組をみた。私は二カ国語放送でみて、英語を勉強します、となぜか声高に宣言する園子さん。猫ガバリ。

2005年9月6日(火)

小説二本、午前と午後にすすめる。リレーのようなかたちになってきました。たいふうが近づいている。四国の家など少し心配。雨の予感にうちふるえながら、庭の雑草が、導火線のように一気に伸びて地面がみえなくなる。猫たちミギャーと叫び、飛びついてめちゃくちゃにかじる。たいふうのせいで猫たちもおかしくなっているのか。庭にたまった枯れ草や枝は落ち葉の季節前に片づけておいたほうがいいでしょう。明日は曇りでしょう。晩ごはんはサンマ塩焼き、これは少しパサパサの品だった。キュウリの中華風甘酢漬け、中国野菜の炒め物、山芋納豆、そして大根おろし。ニューヨークとリンにおくる段ボールにトーテムポールのような絵を描く。猫とロバの絵柄はたしかにこの家のシンボルにまちがいない。リンにいるフィリピンのおとうさんのためになめくじも描いておく。

2005年9月5日(月)

からだ痛い。日記半分くらいまとまったので、幻冬舎用の短編を書きはじめました。からだ痛い、とまた書いてしまうほど痛い。これはひょっとして、アメリカ? といっても、自分のからだに白い毛虫が這い回っているということでなくて、アメリカ疲れというものなのでしょうか。からだ痛い。スカートをはき昔のひとのように三つ編みにした園子さん帰ってくる。熱くした風呂にゆっくりはいる。晩ごはんは猫パーティ。すなわち、かつお刺、さんま刺、いわし刺、たこの刺身。みょうがとしらすときゅうりのあえもの、豚汁。生酒をのむ。もうろうとなった半透明のからだにぶどうの香りが溶けていく。からだがブドウ状に粒々になっているのが怖くて見たくない。布団に寝るとからだのあちこちがころころと転がっていき「ああ!」と思わず手を伸ばす。猫が小指をかじっている。

2005年9月4日(日)

午前中、やはり日記の整理。家のまわりはぶどう真っ盛りで、デラウエアはもちろん、ナイアガラ、巨峰、そしてピオーネが、空中に砂を投げあげたようにそこらじゅうで実っている。窓をあけると家じゅうがぶどうフレイバー。園子さんの新作、屋台風の素麺を食べたあと、町へ出て服屋、書店へいく。ボニーに送るための日本の文学セレクション。帰って40分くらいランニング。近所の三姉妹が、うちの庭の柿の木の下で「アメリカ、アメリカ」と騒いでいるのは、別に猫や我々がアメリカかぶれして帰ってきたよハハ、といいたいわけでなく、樹冠のところどころに害虫アメリカシロヒトリが巣くっている、というメッセージです。近所の資材センターで高枝切りのはさみを購入。はじめは植木屋さんにみてもらって、はさみは柿の実をとるときに使うことにしよう。風呂にはいって、晩ごはんは生野菜サラダ、アボカドとトマトのサラダ、茄子のつけもの、そしてカレーライス。からだがものすごく痛くなり、痛い、痛いとさわいでいたら、表でざんざんと大雨がふりだす。たいふうだったのか。灯りを消すと夜の闇がぶどうの香り。

2005年9月3日(土)

午前中ボーボー。これは別に、家のまわりで虫が燃えているわけでなく、頭のなかがいまだくすぶっている、という状態をあらわしています。天気は涼しい晴れ。昼までに滞米中の日記メモを見返し整理をした。そして今日は、トライアスロンをやった。まずは自転車に乗って、くねくね道をくだっていったところの商店まで、リュックを背負い焼酎を買いにいく。帰ってからランニング。新しいランニングシューズ、腰巻きボトルケースなど、走るひととしてこれ以上ない正装で駆けだしたところ、途中でポロポロと夕立が降ってきた。キリキリと断腸。イヤーン、と腰をふりふり家まで駆けもどっていく途中、雨はやんだ。いちおうランニングになった。三種目目として庭の草取りをはじめたら、隣の犬がひどく吠えはじめ、そして、ご近所の三姉妹が順々に庭先へやってきた。三女は自転車、次女は一輪車、長女はあるき。三女が杏をくれ、次女と虫の謎について語り、長女には飛行機から傘でとびおりた話をしました。着地したときのバランスのとりかたを、くねくねと膝を曲げ四人で練習した。根こそぎにした草の山は現代美術のオブジェのようです。晩ごはんはカマスの開き、きゅうりのピリ辛つけ、長芋納豆和え、揚げ茄子みょうがおかかの甘酢和え。やはり頭のなかボーボーの園子さんクリン。ぶどうをもじもじたべ、虫の音がひびくなか、蜂飼耳氏、野村喜和夫氏の詩集を読む。

2005年9月2日(金)

早朝に起き、「みずうみ」の細部をなおして、河出書房に送る。昼までに、会ったことのない出版社のかたから、何本も電話がかかってくる。いまだ、郵便物を全部みていないので、返事にこまってしまいました。みなさん、失礼いたしました。まるいちの美智代さんより電話。我が家が渡米しているあいだ、松本の猿田さんと、交流があったらしい。そういえば、8月の末にまるいちはテレビで特集されたのです。三崎に戻ったとき、ビデオで見せてもらおう。そんな話をしていたら、網戸屋さんといっしょに猿田さんがきた。きゅうりを大量にくださった。ありがとうございます。日暮れごろ、庭をまた掘りかえし、両腕が重くなる。ふと見ると肘から下にぎっしりとエノコログサが生えそろっていた。カシ、カシ、とカマで切り落とし、風呂にはいる。園子さん、ホームアゲイン、ホームアゲイン、と英語でいいながら工房から戻ってくる。晩ごはんは、豚肉と夏野菜の味噌炒め、おくら奴、きゅうりとちくわとみょうがのサラダ、ししゃも、しらす。「小魚をお食べなさい坊ちゃん」とエプロンをつけた猫がすすめる。夜はボニーのくれたLouisiana Power & Lightを読む。頭のなかに雑草が生えてくる。耳から飛び出たそれを鼻毛切り鋏でちょきちょきと切る。

2005年9月1日(木)

二週間分の郵便物、日記などをひたすら整理。けれどやはりまだ、終日ぼんやりとしている。松本駅前にあたらしくできたという、居酒屋の宣伝のため、気弱げなあんちゃんがクーポン券売りにきた。「あ?」と大阪弁で低い声をだしたらすぐ逃げた。園子さん、ひさしぶりの工房から、モーロー体で帰ってくる。猫たちのまぼろしが家じゅうに溶けている。夕方、増毛剤をふりかけたような不揃えな雑草庭におり、クワとカマで、エノコロやタンポポなどを根こそぎにする。晩ごはんは牛肉とタマネギとサラダ菜とラディッシュのサラダ。ゴーヤチャンプルー。みょうがとししとうのおかか和え。冷やしトマトサラダ。庭のリバウンドで肩痛くなる。にう。