2007年1月

2007年1月31日(水)
朝からヨムヨムカク。オワル。昼から図書館へおりていき、アイスキュロス、高橋たか子など読んだ。天気がいい日の図書館はおっさんの体臭が強くなる。これは体臭とは関係ないのですが、ここ十数日、背中と腹がかゆい。風呂上がりに白いぬるぬるしたものを塗っても塗ってもかゆい。脱皮するきざしかもしれない。蝉になるのかもしれない。とんぼのほうがいいな。園子さん鍋とお盆を出前持ちのように持って帰ってくる。晩ごはんはにんじんサラダ、ジャガイモのチーズ焼き、鯛の香草蒸し、チャンジャ、湯豆腐。ひとり日和を読む。ウイスキーのむ。

2007年1月30日(火)
ブルルッ。yomyomをkaku。今回は高野山のこと。それにしてもえらいぬくいですな。昼にカレー食って、クロネコ基地そばの道路工事現場を見にいった。いつの間に舗装まですんでいたのか。透明な巨人の人足が夜中に働いているのではないか。夜中なら別に透明である必要はないか。夕方まで「動物感覚」の本を読む。なんか臭い。別に、動物の臭いがするわけではなく、アメリカの小商いに関わるひと独特の臭気、といった感じ。途中までがまんしてやめる。晩ごはんはアボカドサラダ、べてる昆布と長芋と大葉の和え物、蒸しスナックいんげんは緑のむいむいのよう、かれい煮付け、長芋キムチ焼き。庄野潤三を読む。

2007年1月29日(月)
えろ晴れてまんねんな。朝からサイン本をつくり、別海のウルリー牧場へ送る。電話が鳴り、受話器をあげるとピーガガー。置いてしばらく経ち、また電話が鳴るので、受話器をあげるとピーガガー。こちらの頭もピーガガー。いっそ電波になってお前らを狂わせにいきたい。午後からゲラ。日暮れごろ終わり、外に出てみると常念は白く尖り、乗鞍岳は金属のように輝いていた。園子さん槍をかまえながらすり足で帰ってくる。晩ごはんはカレーライス。芋、にんじんなど、クレーが喜びそうなキュビスムカレー。キレー。クレー。頭ブルブルブル。少し落ちついてブローティガンを読む。

2007年1月28日(日)
非常に好天。朝から掃除。年末の大掃除ができなかった分、激しく雑巾がけやらから拭きやら。赤い箪笥がきもちよさそうにアーと伸びをし、天井を突っ切って屋根から上に出た。アー。午後はゲラ。掃除したての座敷のこたつでやるとふだんになくはかどった。缶詰効果だ。家のなかで缶詰ができるなら安いものだ。ツナ缶なら問屋におろしなさい。晩ごはんは、こうや豆腐としいたけときぬさやの炊き合わせ、けんちん汁、牡蠣ごはん。なんとも春らしいごはんですな。夜中までゲラ。きょうのできごとを読む。ウイスキーのむ。

2007年1月27日(土)
氷点下やおまへんのか! というおやじのだみ声に驚き起きると気温4度もありシッダダダールタ! ぬくいやおまへんか大将。へえ、だ、だからぼく、裸なんだな。大将はさておき午前中YOMYOM原稿。お昼にウイスキーとどく。明るい農村という焼酎もとどく。アルチューで乱暴。さすが仏文科。クロネコ基地の前の舗道を広げる道路工事を先週からしているのだけれど、どういうわけかまったく気にならない。前のドドドグワーとはえらいちがい。距離が少し遠くなるだけで騒音はこれほど静まるのか。家の前で工事がはじまったらみんな後ずさりすればいいと思った。園子さんは前のめりで坂本龍馬のように帰ってくる。息を荒らげながら冷蔵庫をあける。晩ごはんは大阪から送ってもらった王子の肉ですき焼き。ものすごくたくさん野菜を食べた。ふたりともロバになっていたのか。遅くまで自分のゲラを読む。

2007年1月26日(金)
マイナス5度くらい。東京に着くとみな膝をつき喉に手を当て空をみあげながら、水、水ぅ〜と呻いているくらい暑かった。まちがえてアラブの国へいったのでしょう。昼前からお茶。炭所望の点前。塗りの手桶の薄茶点前。自分の手元がものすごく遠ざかるような感覚に襲われる。四時過ぎに辞去し、五時発のあずさで松本へ。傍若無人のしかたに筋の通っているおっさん。それはどういうおっさんかというと、ぼくが指定券の席にいくと、ものすごい大股で座っていて、「ここ俺の席ですけど」といったら顔をしかめて立ちあがり真後ろの席にいった、その席にはおっさんの背広がかけてあり、隣の席にはおっさんの荷物が置いてあった。つまり、このおっさんは自分のうしろに誰かが座られるのが好きでなく、わざわざ四席を占拠し、誰か来てもともと、というつもりでぼくの席に座っていたらしいドヒー。こんな面倒な傍若無人より、斜め前に座っている、靴下脱いでダラダラなおっさんのほうがよほどわかるじゃと思っただ。松本駅で園子さんと合流。今朝、家の鍵の受け渡しを忘れていて、工房が終わってからもずっと外をウロウロしていなければならなかった、ときかされ衝撃。ツルヤにいると時間があっという間に過ぎてしまいます、と園子さんはいった。とんこという店でヒレかつを食べた。帰り着くと飯ぬきだった猫たちが頭にヒレを立てて怒った。富士読了。

2007年1月25日(木)
陽ざしのまぶしい朝。マイナス4度くらい。朝から創作。たまった日記整理。キューバの依頼原稿も書く。ここ一週間くらい日没の時間が目にみえておそくなった。これまでは四時半には暗くなり、家の外階段と玄関の電灯をつけておいたのが、いまは五時過ぎてもほのかに明るい。そのなかを暗黒の園子さん玉のように帰ってくる。暗黒だったのはアンコウのせいだった。晩ごはんはアンコウ鍋、べてる昆布と納豆と大葉の和え物。腹と背中がかゆい。春のカエルが背中から顔を出すかもしれない。

2007年1月24日(水)
パッとしない曇りだねえ。朝から創作。東京からとんぼが束を吊して飛んでくる。パウル・クレーの本だった。パウル・クレーの絵を見ながら書いたエッセイが載っています。徐々に晴れてくる。円空の本読む。園子さん帰ってきてキャベツをまるのまま鍋につけて茹ではじめたので頭がキャベツぽくなったかと思ったら表面一枚ずつ茹でているのだった。ロバ関心。風呂にはいり、晩ごはん食べてクレー。ロールキャベツ。混ぜてクレー。トマトとモッツァレラチーズと大葉のサラダ。つまんでクレー。カブとキュウリの甘酢和え。吠えてクレー。王子のサイコロステーキ。素直なまぼろしの猫たち夜の山へ向かってクレー、クレーと吠える。園子さんはインターネットで蟹について調べている。武田泰淳を読む。

2007年1月23日(火)
けっこう寒いヨナー。ヨナス・リーという作家の書いた漁師とドラウグはこわかった。その地方の国のひとが書いた絵本「セーラーとペッカ」シリーズの帯の推薦文を書く。ギャラリーエフの写真展に出すテキストを書く。ゲラなどやる。日が暮れるとヨナスの国のように冷えてくる。その辺にドラウグでもいるんじゃないか、ハハ、と思った瞬間、「ドラウグー」と叫んで園子さんが飛びかかった。ロバ卒倒。ホイホイ、と猫たち。ホイホイ。猫祭り二夜目。晩ごはんはかわはぎ煮付け。べてるこんぶとトマトの和え物。やりいかとせりとエリンギの中華炒め。絹さやの卵とじ。佐島しらす。もう少し肝が増えれる時期になればかわはぎは煮付け界のキャプテンである。インストール読む。第三の神話読む。

2007年1月22日(月)
とても寝坊。午前中創作。まるいちから魚便とどく。あけてみると、生のまぐろ、巨大ヤリイカ、かわはぎ、みりんぼしがはいっていた。堀江さんよりコーヒー便とどく。まぼろしのうなぎが旅するガラパゴスのコーヒーだ。ありがとうございます。午後は小川国夫を読み、高野山のことなど整理する。ホイ、ホイ、とゆうべのリズムに乗ってうたいながら園子さん帰ってくる。猫たちは倉庫から半被や神輿を出してきて玄関で迎える。今年初の猫祭りだ! 晩ごはんはまぐろ刺、やりいか刺、水菜のサラダ、炙り厚揚げ、コーンのバター炒め、鶏大根。猫はまぐろをかみしめて泣いている。ロバはコーンだらけになって泣いている。「セーラーとペッカ」という絵本のシリーズのカラーコピーをを最後まで読んで愕然とする。

2007年1月21日(日)
けっこう寒くマイナス6度。厄よけの牛伏寺へ。というのも今年は本厄の年だからブルルッ、ロバこわい。山道をのぼっていくと昨年にひきつづきドロドロの空気。大勢の参拝客、祈祷の客。厄除けにくる、ということは、いまここにいるのは厄めいた老若男女ばかり。寺の本堂では厄が煮こごり状態になっている。百数十組はいたのではないか。牛伏寺も真言宗の寺で空海が開いたらしい。護摩をたき、太鼓をドンドンドンと打ち鳴らしながらお経を読む。たいそう痛快。これなら厄もホロホロに解けていく。清められた札をうけとり、アイスバーンの山道をくだる。途中田舎家で、天ぷら蕎麦と牡蠣蕎麦をたべた。帰って仏教の本を読んだ。ロバよ、腹だけでなく全身がかゆいのはどういうわけだね。サーそれは、虫がいるんじゃーないですかねー。虫! 俺の頭のなかで虫が見張っているのか。一挙手一投足を木星の基地に報告しているのか。スパイめ! すっぱいのは梅、晩ごはんはいわしの梅煮。蟹キュウリサラダ。ほうれんそうきのこ和え。園子さん鍋をもってきて、ホイ、という。ホイ、回鍋肉ですよ。ホイ。と受け取る。食べながら、香炉を投げあう坊主たちについて考える。目がグルグルまわる。ホイ。ロバはキャベツが好きである。みかんを食べて小川国夫を読む。

2007年1月20日(土)
ぬくい大阪の朝。阪急電車に乗って京都へ。おっさん前でガーと寝ている。京都はさらにぬくかった。目的地は藤井大丸かと思ったら烏丸のほうのふつうの大丸だった。佐藤巧さんの追悼展。お兄さんの佐藤さんが出迎えてくれた。写真など見ると本当に佐藤さんがふたりいるよう。作品はどれも大きくて愉快なものだった。ぜんぜん知らないひとがフラッと会場に入ってきて驚き楽しめるような。今回は百貨店の展示なので、オブジェものでなく、使えるものが中心。園子さん用に花器と自分用に湯呑み買う。佐藤さんと地下鉄で京都駅へ行き、駅ビルでお寿司を食べた。午後二時京都発のぞみ、しなのと乗りついで、五時に松本に着いた。ヨー猫。ヨーろば。本屋で少し時間をつぶし、園子さんと合流し、れいざんへいった。こちらは湯麺。園子さんは五目やきそば。精進料理の後の湯麺は胃にからみつく感じだった。

2007年1月19日(金)
シッダールタ! けっこう寒いではないか。たぶん氷点下4度くらい。7時より朝のお勤めハンニャーハーラー。たいへん華麗な本堂。しかしこれを外の星から来た人が見たらフハハと笑うのではないか。ご住職は読経のあと、改築中の庭にむいた部屋について説明してくれる。二階は洋室にして、ベッドを入れるそうだ。スイートも作るそうだ。スイートとは洋室と和室のつづきの間だそうで、両親を連れてくると喜ぶかも知れないと思った。大師教会へ行き、御授戒をうける。薄暗い本堂に入れられ、ほとんどなにも見えないなか、どこかで戸が開き、阿闍梨様が入場。ナムダイシヘンジョーコンゴーを数限りなくとなえ、やがて薄明かりのなかにしずしずと座った阿闍梨様の口から発せられた声は、意外なくらい若かった。阿闍梨様は仏教にいう十戒について簡単に述べ、森に心根のよいお猿さん、狐さん、兎さんが住んでいた話をしてくれた。猿が哀れだと思った。普門院で集合し高野山駅へ。ケーブルカーで極楽橋、高野線で天下茶屋、Uターンして帝塚山でおりる。帝塚山市場を通って大阪の家へ。昨日急遽、うちの仏壇を撮影することが決まった。うちの仏壇は毘沙門さんはじめさまざまな木彫物が踊る愉快な空間。両親がコーヒーで出迎えてくれる。父の仏壇談話。「うちにもちょっとオタカラがあるんでね、オタカラが」といって木村さんに、大同四年、唐から帰ったばかりの空海がお経を彫りつけたという黒い石を手渡した。素手で。石には「空海」とも彫ってある。木村さん口カクカク。撮影が済んでから、木村さんと広瀬さんを、お好み焼きの多奴喜へ案内した。今年の三月末で三十周年を迎えるらしい。ほうですか、ぼくは小五くらいから来てまんねんな。からだの半分は豚玉でんな。ドロドロドロ。店やってて、しんちゃんみたいに、こないしてきてくれるんが、いちばん嬉しいもんやて、と昔にいちゃんやった、いまのおっちゃん、もうすぐじいちゃんになるご主人はいった。編集チームのタクシーを見送り、実家で学生のとき買った本を読んでみた。さっぱりわからん。午後七時半、なんばで松山嬢と合流。十一ヶ月大阪で過ごし、今月東京へ戻ることになった。正弁丹吾で刺身、天ぷら、焼き鳥、味噌おでんなど。休みがあると、京都、奈良へ行き倒しましたよ、と語る松山嬢の口調は、完璧な大阪北部の大阪弁になっている。梅田のバーに行くとキタの中年男性のアイドルのようになっていた。いつか奈良と京都と大阪のちょうど中間に住みたい、と松山嬢はいった。なるほどそれはいい。

2007年1月18日(木)
ウイー、暖かい。氷点下でない朝。しかし本堂の空気は冷えている。6時半より朝のお勤めハンニャーハーラー。ストーブに当たっているからだの左側だけ熱く、右側はすきま風に当てられ冷たい。寒い、と感じるのは、一体のからだのなかで、極端な温度差が生じることによるのかもしれない。朝ごはんも精進。荷物を二泊目の普門院にはこび、テクテクと金剛峯寺にいった。白黒の犬。日本でもっとも大きいという石庭を見たとたん、園子さんはフハハハと笑った。非常にただしい反応だと、フハハハと笑いながら思った。十時半に清浄心院。猫ちゃん一回忌の書類はすぐ書けたけれど、園子祖母ちゃん二十七回忌の書類はところどころつまった。隣には園子さんがいてじっと見ている。本堂にはホットカーペットが敷き詰められていた。祖母ちゃんに連れられて現れた透明な猫ちゃん正座させられてギエー。ギャーテーギャーテーハーラーギャーテー、ハラソーギャーテー。読みあげられるお経のなかで、いし〜しんじの〜すい〜し〜、と呼ばれているのは猫ちゃんで、それはまあいいのだけれど、いし〜その〜こ〜、行年○○〜、と呼ばれたのにはギョエーと思った。それは祖母ちゃんのこと。そして隣にはまだ行ってない園子さんが数珠を握って座っている。お経がすんで外へ出て、あれは驚きました、といったら、園子さんは、私もヒョエーと思っちゃった、といった。タクシーで高野山の駅。園子さんを乗せたくだりケーブルカーを見送り、待合室でおにぎりを食べた。一分後にのぼりケーブルカーがやってきた。YOMYOMの木村さんとカメラの広瀬さん到着。まず普門院に荷物を置き、自動車で中ノ橋までいき、新しい墓を経て奥の院にむかう。入り口すぐのロケット型の石碑、しろありよやすらかにねむれの石碑などやはり強烈。途中で日本の写真家の慰霊碑があった。広瀬さんは手を合わせた。石柱と杉の下をうつむいて奥の院。本日三度目のハンニャーハーラー。ここのお堂は座ったまま何時間でも過ごせる気がする。貧女の一灯で飯炊きをする。途中でお経が弘法大師一代記のようなものにかわった。さらに奥の大師廟へいくと遠くからの団体の爺さん婆さんが手を合わせハンニャーハーラーとやっていて、ぼくたちも手を合わせナムダイシヘンジョーコンゴーを三回。森のなかを見つめしばらく呆然としている。奥の院に来るといつも自分が奥の院の一部であるという気がする。帰りに落書き塚に猫の落書きをした。中ノ橋からタクシーに乗り、大門へ行き、歩いて金剛峯寺までもどった。本日二度目の石庭。二度目のフハハハ。木村さんもその途方もなさにあきれていた。五百坪の砂地の雲海に、140個のばかでかい石をならべて、雄と雌の龍のかたちを作っている。石は四国から運んだらしい。すさまじい「いま」「ここ」の美術。興奮のあまりヨロヨロと外に出、酒屋で焼酎を購入。三人で日暮れの普門院にたどりつく。ここは昨日とは違い宿坊らしい部屋で、しかし暖房は完璧、こたつもヒーターもあり、掃除はやはり隅々まで行き届いている。小堀遠州デザインの庭が有名なお寺とのこと。ご住職がメジャーな女性向けお化粧雑誌にエッセイの連載をもっている。晩ごはんは精進料理。湯豆腐、天ぷら、ごま豆腐、ごぼう、お吸い物、木村さんが「これなんでしょうね」といって摘みあげたものはチーズに似ていた。小鉢に入っていたものはちりめん山椒に似ていた。お風呂は大浴場で「温泉」と書いてあった。木村さんによると温泉にもいろいろあるという。「かけ流し」という言葉を、温泉にいるサービス係のおやじのことで、洗い場でからだを洗っていると、「じゃ、お客さん、かけ流しやしょうか」とたらいをもって後ろから近づいてくるような人だと思っていた、と何の気もなしにいうと、木村さんだけでなく広瀬さんも呆れた。夜中まで三人で和歌山産の焼酎をのんだ。

2007年1月17日(水)
いやー大阪の麻はゆるいなあ、いや、朝はぬくいなあ。園子さんと天下茶屋から10時のこうや号に乗る。山へ近づくにつれ窓の外は霧ばかりとなりやがて雲のなかを進むような景色となる。何度も乗ったけどこんなに高野山っぽいこうや号ははじめてだ。雲の中で何度も停車した気がするけれどそれは気の迷い。定刻に極楽橋駅に到着し、金属の坂がそのまま山をのぼるようなケーブルカー。高野山を歩く、といった本をめくると、どれにもケーブルカーでのぼるなど邪道、極楽橋からは歩いてこそ真の高野山に触れることができる、などと書いてあったが、ぼくらはそういう行楽で行くのでなく用事で行くのだから、大きなお世話である。用事とは猫ちゃんの一周忌のお勤めである。今朝、家を出ようとしたら、父に「お祖母ちゃんの二十七回忌のお布施も渡しといてくれ」といわれ封筒を預かった。お祖母ちゃんの名は園子である。二十七年前の一月に亡くなった。園子さんは高野山駅で二日間フリーパスを買った。明日、お勤めがすめば園子さんは松本へ帰り、入れ替わりにYOMYOMの取材チームがのぼってくる。都合ぼくはちがう宿坊に二泊する。一泊目は持明院。四国八十八箇所のお遍路を終えたひとらがのぼってきて仕上げに砂を踏むところ。荷物をあずかっておいてもらい、テクテクと歩く。金剛三昧院の偉大そうな塔。高野山高校野球部のランニング。買い出しの若い坊様。高野山の町で驚くのは酒屋の多さである。薬屋の前で園子さん立ち止まり「陀羅尼錠・・効くんですかね」といったので少し驚いた。日本じゅうの家の薬箱には必ず陀羅尼錠があって、それを又いつ飲まされるかと、その家の子どもはおそれおののいているものではなかったのか。子どもを従わせたいときは陀羅尼錠を出しなさい。数珠専門店で熟考の末それぞれの数珠を買う。テクテクと大門。朱色の見あげる門に霧の欠片がまとわりついていてところどころ見えない。目的の釜飯屋の前に張り紙がしてあり、一月いっぱいはお店休みだと書かれてあったギャヒー。雲のなかをテクテク。渋い喫茶店でトーストをたべた。コーヒーがとてもおいしく、見まわすと高野山の町のそこかしこに喫茶店があり、表向き酒が飲めない人が多いと喫茶文化が発達するのかもしれんとおもった。根本大塔、霊宝館へいく。仏像や曼荼羅やお経。高野明神と白黒の犬。ものはちがうけれど以前上野でみたのと同じ構図の有名な涅槃図があり、園子さんは顔を近づけて眺めながら、私あらゆる絵のなかでこの絵がいちばん好きかもしれませんといった。さすが寝るのが仕事の猫の化身だと得心。園子さんの誕生日はお釈迦さんの誕生日だ。いっぽうぼくの誕生日はお釈迦さんの入滅の日である。シッダールタという語のダの部分を思いきり強くいうと驚きをあらわすひとりごとになる。持明院に戻り、宿坊へ通される。座敷に入った途端シッダールタ! 十二畳敷きに大きな床の間があり六畳の次の間と三畳の間がある。襖には水墨画が描かれ、窓の外の石庭とその絵は対応している。高級旅館、いや、さらにいえば大金持ちの家に招待されて離れへ通されたよう。さらに普通の旅館とちがうのは、掃除の行き届き方。さすがお寺。大浴場にはごうごうと音をたててお湯が注がれていた。精進料理を食べる。しいたけにんじん高野豆腐の炊き合わせ、かぶら蒸し、その場でつくる湯豆腐、白と黒のごまどうふ、紅白なます、お吸い物、茹でブロッコリー、芋と茄子と南瓜と梅の天ぷら、漬け物、果物。お飲み物はといわれたのでお酒を二本もってきてもらいこれがまた絶妙な燗のつけかたで。ベジタリアンメニューと精進料理のちがいについて園子さんと話す。それは食べる側の生命観にかかわる。世の人を救うために殺生戒をまもるひとがとことんいくとどんな人よりも多くの肉を食べようとするかもしれない。菜食主義者なおもて往生す。いわんや肉食者をや。宗派がちがいますが。いいながらごはん食べ続けおひつが空になった。それにしても途方もなく長い一年だった。こんなに長く感じたのは小学五年生までの一年ごと以来かもしれない。大きな出来事に遭うと時の進みは遅くなる。大きすぎると止まる。そのようなことが数回あった。冷えたみかんを食べる。園子さんがゴトンと水車のように寝返りを打つ。

2007年1月16日(火)
予報士さん、ぬくいというてはりましたな。そやのにまたマイナス9度だっか。バナナもみかんもそら凍りまっさ。つらら。午前中、税理士さん来る。園子さんはコンピュータやファイルを見せて相談している。ホー、西鶴。あとずさりして松本駅へ。しなの、のぞみ、新大阪からなんば。文楽劇場で母と合流。新春公演では巨大な鯛がにらみあうオブジェが置かれる。学生のころ何度か来たけれどいつも酔っていたなあお里さん。恋する娘が海辺でたそがれているとたこがでてきててんごする。そのうち仲良くなって娘とたこは踊りだす。こんな舞台が他にあるか。人形がやるのと生身の人間がやるのとはたしかにちがう。人形がやるほうが、人間がそこにいる気配がどうしてか濃い。ふだん自分のまわりにいる生の人間のいかたはまさしく文楽の人形のようないかたなのではないか。途中で園子さん合流。三味線も義太夫も人間のようにうねる。自分のからだが三味線になっていく。横を見ると園子さんは義太夫の声になっていた。ビンビンウエー、ビンビンアーエー、と鳴りながら、足早な母とともに雨の千日前。正弁丹吾に着いてミニ誕生会。ビンビンオイエー。ポンとシャンパンあく。刺身や味噌おでんや炊き合わせや牡蠣フライなど食べた。母はプレレントのアザラシをアザ子と命名した。

2007年1月15日(月)
マイナス9度。つらら。朝からクロワッサンのエッセイ。なんやものごっつい寒いやんけ。と書きながら両足をじたばたさせてしまうほど寒い。三崎のことを書きながら白い城壁のような残雪をみわたす。城壁の向こうから鎧をカチャカチャ鳴らしながら園子さん旗を振りかざして帰ってくる。旗は風に吹かれたかたちのまま凍っている。熱い風呂をわかし、晩ごはんはキムチ豆腐牡蠣鍋。長芋納豆。納豆があちこちで売り切れているらしい。買い占める女が買い占めているのかもしれない。女はいまごろ納豆風呂にはいっているかもしれない。ぜったいにそんなことはない。ネバー。

2007年1月14日(日)
新宿の百貨店でプレレント買う。プレゼントを昔からプレレントといってしまう。そのように園子さんにいうと、私、おめでとうというのを、おめれとうといってしまいます、といっていて、同じようなことがあるものだと思った。買ったのは花柄のコップと花と毛糸製のあざらしだった。あずさ号車内の大家族。曾祖父母、祖母、父母、息子と娘、孫ふたりの五代がそれぞれ進行方向にむいておとなしくすわっている。と、甲府あたりで誰かが「椅子を回転させれば向かいあって座ることができる」と思いつき、皆たちあがって椅子を回そうとしはじめた。いちばん上の代の男性が亀のような歩みと人形のような手つきなので後ろから手を伸ばし椅子を回してやろうとするとものすごく警戒をこめた目つきでにらまれたドヒー。手伝っただけですよう、とロバ逃げていく。帰り着いた松本は寒くそこらでひとびとが携帯電話をかけた姿勢で凍りついている。ここはハバロフスク、スパイ天国ですか。晩ごはんはボルシチ、鴨ロース、レタスとプチトマトのツナサラダ。納豆とアボカドの絶妙なサラダ。園子さんの友人ノムさんがパリからもってきてくれたプレレントのワインをノム。

2007年1月13日(土)
東京の朝は麻でできた婆さんのようにヘナヘナぬくいですなあ。レッツゴー神保町。東京堂書店の応接室でキューバ日記のサイン本作り。佐野さんと釣りや本や外国の世間話をしながら書いていくのは十年間かわらない。淡路町の紹介された整体へでかける。若い女性の整体師。頭から尻をさわり、オヤー、尾てい骨がみょうにめりこんでいますね、という。口カクカク。子どものころ高いところから落ちてお尻をひどく打ったことはないですか。うう、わかりません。ひどい打ち方すぎて衝撃で忘れたのかも知れない。ともかく尾てい骨の内側へのめりこみが、腰骨の不安定さを呼び、からだの左側が落ちる傾向があり、左の肩胛骨がかたまり、右の肩が張る、という結果となっている。これまで何度となく整体に通ったが尾てい骨のことをいわれたのははじめてだった。からだの向きを直してもらい、冬用の靴や防寒着など買う。浅草の並木藪で蕎麦の会。奈良さんがかっこいい。断酒というほどの気負いもなく、泰然とすわり、はじめからそば湯を飲んでいる。二葉へうつり、関さん、長薗さん合流。ご主人やおかみさんはお元気そうでよかった。唐揚げや揚げ出し豆腐、酢の物など食べた。ビューホテル脇のバーへ行き、身を寄せ合って様々な話。奈良さんは最後まで穏やかだった。酒が入っていない状態のことを英語でドライというけれど、それは飲むひとが飲んでいない状態をいうのであり、酒を必要としない人に酒が入っていなくてもそれはまったくドライでなくて、かえって適当な湿り気を帯びて艶やかな感じがするのだと思った。

2007年1月12日(金)
朝8時のあずさで新宿。11時過ぎ、笹塚で孝典と合流し、お茶の初稽古へ。色も味も鮮やかなお膳が用意されてある。初炭点前。炭の組み方を勘違いしていてまるぎっちょを口にくわえそうになった。孝典はほめられていた。高橋さんがひさしぶりに来られてうっすらと光の満ちた初稽古になった。午後六時に辞去。神保町の東京書店で佐野さんに挨拶。孝典とお茶の水のホテルで豪儀な天ぷら。六本木のバーに行くとしまっており、青山の昔のバーにいくとたいへん繁盛していた。ラム酒などのんだ。帰りぎわに店長に、十五年ぶりくらいですけど覚えてないでしょう、というと、もちろん覚えていますよ、根本敬さんの「黒寿司」を私にくれましたね、といった。

2007年1月11日(木)
晴れてるマイナス4度。電話で大阪の文楽劇場にかけたらあっさりいい席が予約できて驚き人形のように口をカクカクさせた。鬼海さんより写真集のことで電話。午前中少し創作をし、午後は密教の本を読んだ。園子さん熱海サンビーチのテーマソングを歌いながら帰ってくる。これは我が家で昨年買った音楽CDのうちもっとも愛聴している、TORUMANというミュージシャンの「友情」というCDにはいっている一曲。監視塔の上から雪解けを見る。バナナボートが氷点下から浮上する。晩ごはんは蒸し南京、青梗菜と茸のサラダ、かつおの刺身、麻婆豆腐。麻婆豆腐いうのはマー婆さんが作った料理やから麻婆豆腐いうらしいですな。ちゃいまっせ。麻でできた婆さんが作ったんだす。薄っぺらでヘナヘナたなびいてまんねん。

2007年1月10日(水)
マイナス9度。つらら。密教の本を読む。午後にエッセイを書いたら締め切りが似非だった。つらら。こういうときはニール・ヤングだ。レッツゴー・ニール・ヤング。風の中のロバ女となって園子さん帰ってくる。晩ごはんはワカサギの天ぷら、豚汁、いか納豆ふたたび、ほうれんそうのシラス和え、茸とベーコンの炒め物。園子さんは料理のあいだ、大竹さんにいただいた別海テープを聴いている。ヤングだった大竹さんがその頃きいていた曲をダビングしてくれたもの。週末に、と、オールド・マンがはいってる。

2007年1月9日(火)
マイナス7度。全部の窓に氷がはっているのは久しぶりだ。朝からテレビ番組にあらわれるテロップの出方について考える。効果音とともに出てくるときその効果音はどのように聞こえ、どのように表記したらよいか。スー。イエイエ。夕方園子さんと電車で諏訪へ。弁論をきいているうち九時になり、駅前の、親孝行者が集うチェーン居酒屋で、レバニラいため、煮込み、いか納豆、コロッケを食べた。焼酎のお湯割りものんだ。帰りの電車は寒く、家に帰りついても寒かった。氷に覆われた庭木も葡萄棚も地の底に立つ白骨のよう。まったくイエイエの時代だよう。焼酎のお湯割りを飲む。小島信夫を読む。

2007年1月8日(月)
成人式。猫やロバも成人できるのか。イエイエ、成猫や成ロバになれるだけですね。晴れても道はアイスリンク。午前中ゲラを見て終了。昼から硫黄島の映画を見に行く。若い兵士役の俳優の顔、表情がすばらしかった。イーストウッドとは東の木という意味なり。それから美術館。ちょんまげ姿の油絵の肖像画に再会しオーと思う。笠間以来だ。髪がこのまま伸びたら一度ちょんまげを結ってみようか。ちょんまげであずさ号乗っとったらごっついもんなあ。猫たちいっせいに俯きイエイエ。晩ごはんは青梗菜入りサムゲタン、納豆と長芋と海苔、いわしの塩焼き、キムチ。ダン・ローズの短編集を読む。

2007年1月7日(日)
とじこめられた。雪はずっと降りつづき、朝から吹雪。庭も道路も畑も区別つかない。松本とは思えないほどの積もりよう。ずっとゲラ。園子さんこたつで伝票。窓の外に、屋根からふとんを干したようなぶっといつららが見えている。七草がゆをおかわりした。外につもっているのが七草がゆだったらいいのに。グジュグジュグジュ、オ、はこべらや。午後は雪かき。積んでいくと胸の高さくらいまでになり腕いたい。周囲の道路を、若者がかいておいてくれたので本当に楽。気温があがらず、けずったそばから破片が凍っていく。犬の吠え声も凍っている。ガヒン。どんど焼きのことを三九郎とこの地方ではいうらしいですがその三九郎がクロネコ基地の隣の空き地で赤々と燃えだした。園子さんはそれと、録画しておいた小三治の「かんしゃく」を交互に見ていた。アイスクリーム好きだっ。寒い日にはサムゲタン。甘露煮。焼きしいたけ、長芋と水菜のおかか海苔サラダ。厚揚げ。密教の本を読む。テレビにパンダが映り、園子さんガバと起きあがるもまたこたつスー。

2007年1月6日(土)
大雪。えらいこっちゃ。午前中もずっと降る間こたつでゲラ。お昼に雪のなか雪かき。家の庭、道路。かいてもかいてもすぐ積もる。まだ気温が二度くらいなので今のうちに雪をどけておかないと後で凍ってえらいことになる。大和さんの奥さん、西村さんのご主人もかいている。うつむいてかいていたのにどうして帽子がびしょ濡れになったのだろう。午後もゲラ。夕方ふたたび雪かき。道路の雪、早くも凍っている。町内の老若男女が出てきてガリガリと雪を削る。でかいシャベルで道脇へ雪をどかせ、農機具のたぐいで、びっしり貼りついた氷をアスファルトからはがす。しかし全部ははげない。塩カルをまいてよしとする。腰いたい。熱い風呂にはいっていると、たそがれ時、雪のように白い自動車で園子さん帰ってくる。晩ごはんは湯豆腐、蓮根とにんじんのきんぴら、焼きしいたけ、蒸しブロッコリー、王子のハンバーグ。園子さんと東京の洋食屋の評判について話す。外ではなんだかまだ雪が降っている。密教の本を読む。

2007年1月5日(金)
園子さん仕事はじめ。こちらは午前中掃除をして、昼に日経エンターテイメントの取材チームを出迎える。雑誌の表紙や名刺には、エンターテイメント! とびっくりマーク付で書いてあるから、名刺を出されたら一応びっくりしてみせなければならないかと思った。取材チームの編集者は以前大阪のミーツで会ったことのある中原さんだった。そっちのほうが全然びっくりやんけ。中原さん名字とても珍しい名前に変わっていておもしろかった。いやおめでたかった。田舎家で蕎麦を食べ、家にいって、キューバ日記の話、日記全般の話、小説の話、猫の話などする。タクシーが駅のほうへ三人を連れていくのと入れ替わりに、エンターテイメントに詳しい園子さん、ハワイの歌をうたいながら帰ってくる。台所においたお持たせの合鴨ロースなどじっと見ている。晩ごはんはほうれんそう、大根の昆布煮、長芋納豆、大阪の餃子、焼きうどん。田山花袋を読む。固い布団やなあ。それ畳だっせ。

2007年1月4日(木)
園子さん終日伝票。しんじさん終日ゲラ、ゲラ。笑っておるわけではない! 腹がかゆいのだ! どうして腹がかゆいだろう。見ても虫さされもかぶれもない。座敷は伝票だらけになっています。かんぴょうだらけだったらからだにまとわりついて仕方がない。それにしても最近かんぴょうを食べなくなった、と嘆息しかけ、昔から全然かんぴょうなんか食べていなかったことを思いだした。それにしても最近伝票を食べなくなった。晩ごはんは美々卯のうどんすき。うどんすきの名前は美々卯以外に使ってはいけないらしい。「わて、そば好きだんねん」「ほうか、わいはどっちかいうたらうどん好きや」というと、番頭に麺棒でなぐられ、店の裏へひったてられるのだろうか。えらいご時世でんな。腹かゆい。上田秋成を読む。

2007年1月3日(水)
えらいぬくい。雑煮を食べて出発。新大阪で本、園子さんは土産や食材を買っている。松本までの車中ずっと石川忠司さんの「思想家列伝」を読む。「現代思想パンク仕様」の文庫版。気分よろしなあ。家に着いてまずストーブをたいた。とめておいた水道栓を開くとゴヒッゴヒッと猪のように鳴いた。園子さんこたつで伸びている。晩ごはんは外食、どこでもいいですよ、というと、ガバリと起きあがり、焼き肉でもいいですか、といった。いつもの明月館。焼き肉屋がたくさんあるなかで、どうして特においしい焼き肉屋になるのか、という秘密を園子さんからきいた。おら焼き肉屋になるだ。園子さんは明月館の家族関係をチェックしていました。家に帰り、前世は宮廷の女だといったり、おかあさんそこにいるの、というようなテレビ番組を見る。眠くなる。

2007年1月2日(火)
けっこう寒い。きのうはまる一日飲みっぱなしだったのに酒ふしぎと残っていない。兄帰京。外は小雨が降っている。園子さんテレビ欄を丹念に読みこむ。我々以外の家族は住吉さんへお参りにいった。園子さんは金子兜太が小学生に俳句を教える、というテレビ番組を見たいと思った。その放送時間に合わせ、逆算し、買い物へ行って、金目鯛の煮汁でおからを炊き、飲み物とおかきを揃えてテレビの前のソファにすわったのです。ラグビーの試合をやっていた。大学生だった。負けているほうが最後の最後まで粘り、ロスタイムが五分を越した。その瞬間、画面にテロップで「金子兜太の番組は延期します」と出て、園子さんは手からおかきを取り落とした。「どうせはじめから延期するつもりだったんだ」といっている。しかし別の放送で今度は寄席番組がはじまり、園子さんはすぐさま前のめりになりました。昔の漫才師の映像を流す。初詣から帰った家族にWけんじやレッツゴー三匹が語りかける。父泉乃介を独り占め。しかしすぐうねるような大泣き。「ちょっとー、ヘルプ、ヘルプやでー」と二階の母を呼ぶ父。克典いったん帰り、友人たちの酒席へ。こちらでも帰山の三、明鏡止水の袋しぼりなど飲んでいます。晩ごはんはマグロ三サク、おから、しゃぶしゃぶなど。深夜に孝典、園子さんと話していると、ガタンと物音がし、友人たちに両側を支えられながら克典、捕獲されたサンショウウオのような様で送り届けられる。

2007年1月1日(月)
大阪の遅い朝。神さんと仏さん。父の訓辞は終わるかと思うとまたつながる正月の波のようだった。ほぼ例年どおりのおせち。のぶさん渾身の大トロ、中トロ、赤身。そして蟹。そして酒。母が好むのは明鏡止水の斗瓶囲いである。父が好むのは黒龍大吟醸の箱である。玉の光、浦霞なども飲みました。午後、園子さんとともに初詣。生根神社。住吉大社へ。住吉さんの境内はひとの肉と服でペーストを作ろうとしているような状態だった。振舞酒としょうが湯のコーナーに人の列ができていた。大阪はヤンキーが多いですねと園子さんはいった。そうだろうか。いわれてみれば自分も中学生の頃パンチパーマにしたことがある。家に帰りつくと玄関のところで重光叔父さんの家族と合流。皆であがって座敷で園子さんの干し柿、はじめはお茶だったのが、父と叔父さんがめでたい感じで話しだすと、もちろん日本酒の感じになる。金目鯛煮付け、マグロのさくをもっていく。酒グワー。次々に呼ばれる息子たち。座敷の空気が薄桃色にそまっている。泉乃介はまぼろしの猫をじっと見ている。猫たちはみずから玉になり空いた一升瓶でボウリングをしている。叔父さんたち帰ったあと、晩ごはんはばら寿司、金目鯛の煮付けなど。片付けが終わったら一家じゅうで溝口健二の近松物語を見る。



ごはん日記でおなじみの
「まるいち魚店」
▼新刊 発売中▼

●「四とそれ以上の国」(文藝春秋)より発売中

いしいしんじ

【PROFILE】
作家。大阪生まれ。現在、三浦半島の三崎と信州の松本に在住。著書に小説『ぶらんこ乗り』『トリツカレ男』『麦ふみクーツェ』『東京夜話』(新潮文庫)『プラネタリウムのふたご』(講談社文庫)『ポーの話』(新潮社)『みずうみ』(河出書房新社)など、エッセイ・対談『その辺の問題』(中島らも共著/角川文庫)『人生を救え!』(町田康共著/毎日新聞社)などがある。お酒好き。魚好き。メカおんち。きれい好き。

いしいしんじの水洗コーナー
2009.09.10
アトリエダンカン「トリツカレ男」
湯浅湾 港
主演の原田郁子×いしいしんじの対談です!
natalieの特集記事はこちら>
【最近の仕事 2/18更新】
▼ 出版予定 ▼
●単行本「赤ずきん」文いしいしんじ 絵ほしよりこ
(フェリシモ出版)
▼ 出演・催し物など ▼

●冬のメトロ大學「蓄音小説の会」
講師 いしいしんじ


第一部「その場小説」/第二部「蓄音ライブ」

前半、ステージの上で僕が小説を書きながらそれをライブハウスらしい爆音でマイクで読んでいきます。鉛筆を削る音や紙がこすれる音も拾います。
後半は、ブルース、ロックンロール、ジャズから得体の知れない音源まで、20世紀の様々な音楽の、オリジナルの音源であるSP盤を、最強の再生装置「蓄音機」でかけまくります。たぶん「レコード」に関して持っているイメージが爆発します。(いしい)

場所:京都クラブメトロ
日時:2月24日(水) 7:00PM 開場
7:30PM開講→9:20PM終講予定
入場料:1500円(1DRINK付き)
詳しくはこちら >>
ご予約メールはこちら >>
※公演日、お名前、メールアドレス、希望人数を明記の上お送り下さい。

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●いしいしんじの花まつり
@曹洞宗 萬亀山 東長寺


日時:4月8日(木) 開場19:30/開演19:45 
会場:曹洞宗 萬亀山 東長寺
東京都新宿区四谷4−34 TEL: 03-3341-9746
丸ノ内線新宿御苑・四谷三丁目駅/都営新宿線曙橋駅 各駅より徒歩7分

【内 容】
「その場小説」と「蓄音機」の二本立てです。まず、お経を詠んでもらったあと、小説をその場で書きながらマイクで読んでいく、ということをやります。どういうものになるか、その時になってみないとわかりません。原稿のコピーを一枚ずつ、来場した皆さんにさしあげます。それから、ブルース、ロックンロール、ジャズから 得体の知れない音源まで、20世紀の様々な音楽の、 オリジナルの音源であるSP盤を、 最強のタイムマシーン・蓄音機で聴いていただきます。「レコード」とは、こういう音がするものだったのか、と驚愕することうけあいです。
(いしい)

入場料:1500円
ご予約メールはこちら(住吉智恵)>>
お問合せ:東長寺 03-3341-9746

▼ 連 載 ▼
●「自転車日和」(辰巳出版)にて
エッセイ「自転車A面B面」
●「京都新聞」夕刊 第1・第3月曜日にて
「京都猫文字日記」 こちらでご覧いただけます>>
●「真夜中」にて長編小説「雪」
●「読売新聞」にて「本のソムリエ」(不定期)
●「クロワッサン」にてエッセイ「ああ驚いた」
●BAR FLOWにて小説
「みち子の叫び」(CLIPPING 310141)
スクラップブックを使った佐藤理との共同作品
「祝い酒」(POSTER 141310373)ポスターを使ったOSDとの共同作品
ほぼ、月一回連載中

BAR FLOW
港区赤坂8-13-19インペリアル赤坂一番館地下B102
TEL.03-5474-1885
(18時から26時まで営業、日祝休み)

▼ 寄稿・書評・コメントなど ▼

●週刊文春9月11日号に書評 
「四人の兵士」ユベール・マンガレリ著・田久保麻里訳
●別冊文藝春秋四月号にて短編小説
「渦」
●芸術新潮4月号にて紀行エッセイ
「バルザックの家とフジタの家」
●考える人春号にて海外小説
ベスト10アンケート+ドストエフスキー『白痴』エッセイ
同人誌「イルクーツク2」に小説
「塩浄瑠璃」

●別冊文藝春秋1月号に小説「峠」
●芸術新潮12月号にエッセイ
「踊るきのこ 南方熊楠の菌類図譜」
●週刊文春12月6日に書評
「灯台守の話」 (ジャネット・ウィンターソン著・岸本佐知子訳)
●別冊暮らしの手帖
「わたしの好きなインテリア雑貨」
にてエッセイ「わたしと本棚」
●かまくら春秋11月号にて
エッセイ「野性のエレキ」
●エスクァイア12月号にて
エッセイ「ハワイをやる」
●新潮社「波」11月号にて
「ジョン・アーヴィング『また会う日まで』刊行記念座談会」
●「圓太郎馬車」(正岡容著・河出文庫)に解説
●本の雑誌8月号にてエッセイ
「私のオールタイムベスト10 ばさばさと「めくって」きた本たち」
●飛ぶ教室夏号にて
短編「リキテンシュタインの法律」
●「西の旅」夏号にて短編小説「船」
●「パピルス」8月号にて短編小説「小包
●「ナンプレファン」8月号にてエッセイ「自分でも呆れる思いこみベスト9」
●東京人6月号にて座談会
「作家と画家、街の歩き方」
鬼海弘雄×大竹伸郎×いしいしんじ
●銀座百点五月号にてエッセイ「タッちゃんとカッちゃん」
●新刊展望五月号にて対談「『みずうみ』の水面と水底」(デザイナー・池田進吾氏と)
●ビッグイシュー日本版
69号にてインタビュー
特集「わからないからおもしろい」
全国のホームレスが駅前などで一冊200円で売っています。110円が販売者の収入になります。 
●「パウル・クレー 絵画のたくらみ」(新潮社・とんぼの本)にエッセイ「オルフェウスの庭で」


【e-mail address】
mail@mao55.net
【mao55編集部からお願い】
上記メールアドレスで、いしいしんじさんへ連絡をとられる方はメールのタイトルを「mao55編集部【いしいしんじのごはん日記】」と入れてください。「はじめまして...」、「○○と申しますが...」、「ご無沙汰して..」、「至急...」、「会ってもらえませんか」などのタイトルはジャンクメールと処理される場合がありますので、お願いいたします。

【主な著作】

●「三崎日和-いしいしんじのごはん日記2」新潮社より発売中
●「東京夜話」新潮文庫より発売中
●「いしいしんじのキューバ日記」マガジンハウスより発売中
●「いしいしんじのごはん日記」新潮文庫より発売中
●「雪屋のロッスさん」
メディアファクトリーより発売中
●「人生を救え!」
(町田 康 :いしい しんじ)角川文庫より発売中
●「人生を歩け!」
(町田 康 :いしい しんじ) 毎日新聞社より発売中
●「トリツカレ男」
新潮文庫より発売中

坪田譲治文学賞受賞作
●「麦ふみクーツェ」
新潮文庫


●「ポーの話」
新潮社

●短編集
「白の鳥と黒の鳥」
角川書店

文庫版「ぶらんこ乗り」は、新潮文庫の100冊にはいりました。
●『ぶらんこ乗り』
新潮文庫

●『絵描きの植田さん』
ポプラ社


●『プラネタリウムのふたご』
講談社


第18回坪田譲治文学賞 受賞作品
● 『麦ふみクーツェ』
理論社

●『トリツカレ男』
ビリケン出版)

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いしいしんじさんの著作本はこちら】


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